白雲岳を目指して

緩やかな草紅葉と砂礫の中に続く小泉岳への稜線の道(1)をのんびりと歩く。稜線の向こうに白雲岳を目指す人や赤岳を目指す人の姿が見え、高度を上げるにつれて、お鉢平の向こうの北鎮岳や桂月岳、黒岳や烏帽子岳などが見えてくる。小泉岳は北海道で最も高山植物の種類の多い山である。それらのほとんどが草紅葉となり(2)、その中にぽつんとコマクサが一輪咲き残っているのが印象的である。

小泉岳分岐から白雲岳を目指す。ここからは6年前の夏に辿った道である。懐かしい展望が広がり、正面に聳える白雲岳の岩肌に紅葉が張り付いているのが新鮮な眺めである(3)。この辺りからはたくさんの人と擦れ違うようになる。白雲岳への岩稜の道を登ると白雲平と呼ばれる火口原に出る。前に来たときは、雪渓と水で覆われていて、大きな沼状態だったが、今回は草紅葉の広いグランド状態である。その割れ目にちょうど収まる瞬間のトムラウシの姿もなかなかいい眺めである(4)。
登山口から3時間20分、緑岳から1時間15分で白雲岳頂上に到着。結構風が強いが、7人くらいの人が思い思いの方向を向いて休んでいる。6年前の旭岳から北海岳方向にかけての残雪の白とハイマツの緑の筋模様は、紅葉が始まったばかりの薄い赤と緑の筋模様に変わっていた(5)。風を避けて腹拵えをする。

デジカメで写真を撮っている男性がいたので、インターネットをやられていたらと思い、自分のHPのアドレスを書いた名刺を渡したら、「あ、これ、いつも見ていますよ。ワイルドな、2日ぐらいで縦走するところを1日で歩いてしまったりする方ですよね。」と来た。間違いない・・・いつか、山でこのHPを読んでくれている方と偶然にでも逢えたら・・・と思っていただけにと大感激である。旭川のSさんという方である。また、東京から来たという若い男性にも、暇なときにでも覗いてくださいと名刺を差し上げる。(お二人さん、これを読んだらメールください!)
携帯電話で、札幌にいる妻と通話できたが、こちらの好天が信じられないそうである。確かに十勝連峰は黒っぽい雲に覆われて、そちらの方面から雲が広がってくるような気配である。雄大な大雪の山々の眺望を十分堪能し、35分ほど寛ぎ、次々と頂上を目指して登ってくる人と挨拶を交わしながら下山する。
下山の途に就く
白雲分岐からこれも初めて歩く白雲避難小屋への道を下る。途中から横切る雪渓とその上に緑岳が望まれる(6)。小屋の側にはテントが数張り張られていたが、どれも長い間張られ放しのようで、フライシートがかなり痛んである。何度もくる人が自分のベースキャンプにしているのであろうか? 小屋の中を覗こうと思い、周りを一回りするが入り口が見当たらない。よく見たら、2階に窓のようなドアがあり、その下に梯子が掛けられていた。これが入口らしい、中を覗いて見たが、誰もいなかったが、思ったよりきれいでがっしりと作られた小屋であった。60人は泊まれるそうである。

その後、沢地形を横切るが、果たして、新しい雪が降るまでに溶け切れるであろうかと思うようなかなり大きな雪渓が残っている。その上を横切り、緑岳の手前の稜線を目掛けて、最後の登りに着く。緑岳には、ここを目的に登ってきたと思われる10名程が昼食を摂りながら寛いでいる。こちらも、残りのパンを腹に入れ15分程休憩する。体の周りを次々と切れることなくトンボの大群が北から南へ一定方向に斜面すれすれに物凄いスピードで移動していく様子に感心する。普通トンボは舞っている状態が多いが、この場合は、明らかに渡り鳥と同じような目的を持った移動である。
あとは、のんびりと来た道を下り、登山口を目指す。いつの間にか上空は薄曇り状態になっているが、空は高いままである。登山口に着いたら、バスで到着した一行が、紅葉の気配すらない沼巡りに入っていくところである。今日は温泉に泊まり、明日、緑岳経由でどこかへ抜けるらしい。登山もバスツアーが幅を利かして来たという現状に、「貧民一人ぽっち登山隊長」を自称する自分には、何か割り切れないものを感じながら、大雪高原温泉( 600円?)で汗を流し、札幌を目指す。